中川×先輩。472円分
「 代価 」




所詮金か・・・

中川はまだ汗に濡れている手のひらをじっと見つめる。

金で手に入らないモノはごまんとこの世にある。
金に不自由しないことを意識したこともない。
金があることに後ろめたさを感じた事すらない。
要するに金とは単なる名詞でしかない、今までは。

他に方法があったのか?
あれほど悩んだつもりだったのに、結局金の力を振りかざして・・・斬りつけた。
先輩のプライドに?
いや、僕自身の心に。

借金という言葉に手の内の抵抗が一瞬怯んだその隙に・・・
頑なに閉ざされていた扉がその抵抗を躊躇した瞬間に・・・
僕は言い逃れの出来ない欲望をその中心へ突き立てた。
僕の熱は最も深い場所にありながら、望んだモノからこれ以上ないくらい遠い。

手のひらは冷えてゆくのに汗は消えない。


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